人間が頂点の時代は終わる――「止められない」AIの自己進化
「人間が頂点の生命体の時代は終わるんです。超えていくんです」――講演の冒頭、孫正義氏はこう断言しました。2040年には世界GDPの20%にあたる7,000兆円をAIが生み出し、100兆個のAIエージェントと10億台のヒューマノイドロボットが社会を支えると予測しています。
もう人間がエージェントを作る時代は終わるんです。エージェントがエージェントを作るようになるわけです
――孫正義氏(ソフトバンクグループ会長兼社長)
AIが自ら複製し改良する「自己増殖」と「自己進化」のフェーズに入れば、この潮流を人間の意思で止めることは不可能です。孫氏は拒否ではなく、人間がAIを分身として使いこなす「スーパーヒューマン」になるべきだと提示しつつ、進化の負の側面として「サイバー攻撃の武器化」に対する強い警告を発しました。
防御済みのECサイトが「1時間57分」で陥落した現実
続いて登壇した宮川潤一社長は、OpenAIのセキュリティ特化モデル「GPT-5.5 Cyber」を用いた衝撃的な実証実験を披露しました。自社700システムで1万500件(1システム平均15件)の脆弱性を検出した攻撃版AIモデルに、指示文(プロンプト)を与えるだけで自動攻撃を行わせるデモです。
1時間57分
WAF導入・高リスク穴0件のECサイトが乗っ取られるまでの時間
11分
高リスクの脆弱性を3件持つ別システムが陥落した時間
対象となったECサイトは、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)を備え、高リスクな穴も存在しない「事前対策がしっかり済んだサイト」でした。しかし、AIは自律的に手口を組み立てて侵入。顧客情報30万件とカード情報24万件を抜き取り、最終的にサイトを停止させました。
人間にとっては完璧に見える設計や防御策であっても、高度なAIから見れば「穴だらけのパズル」に過ぎないという厳しい現実が突きつけられました。
攻撃AIのオープン化――誰でも脅威を行使できる日が迫る
現在、この攻撃力を備えたモデルは厳重に管理されていますが、宮川氏は「一般公開(オープンモデル化)までのタイムラグ」の縮小に強い懸念を示しました。
大規模言語モデル(LLM)のオープン化には33ヶ月、動画生成AIでは10ヶ月へと期間が短縮されています。2026年5月に登場したサイバーモデルも、このペースで進めば「あと3ヶ月以内」に誰でも入手・利用できる環境が整ってしまう可能性があります。特別な専門知識や大掛かりな設備を持たない者でも、AIを使って機関銃のようなサイバー攻撃を仕掛けられる時代がすぐそこまで来ています。
「モダナイゼーション」と「ワクチン接種(PaaS)」による即応
宮川氏は150年前のシカゴ大火を引き合いに出し、燃えた建物を単に建て直すのではなく「燃えない都市構造」へ再構築した歴史を強調。企業システムも従来の人間の手による設計から、AI前提の構造へ全面刷新する「モダナイゼーション」が必要だと説きました。
そして、システム刷新までの期間を凌ぐ応急策が「Patching as a Service(PaaS)」です。AIで即座に脆弱性を診断し、修正パッチを当てる予防アプローチを宮川氏は「ワクチン接種」と例えました。診断を行った企業の商用コード(1,000万行あたり平均280件の脆弱性)のうち25%が高リスクであったことから、ソフトバンクは1,000人規模の技術者体制を整え、3,000社へ提供範囲を急拡大させています。
KAROYAイージスからひとこと
「WAFを導入しているから安心」という従来の防御観念は、自律型攻撃AIの前では通用しなくなりつつあります。攻撃AIのオープン化が目前に迫る今、求められているのは事後対応ではなく「先回りした脆弱性の洗い出しと修正」です。KAROYAイージスの脆弱性診断・ペネトレーションテスト・TLPT演習は、AI攻撃者の視点を取り入れ、自社システムに潜む隠れた死角をリアルタイムに検出・補強します。AI時代に対応したセキュリティ設計のご相談はお気軽にお寄せください。
出典
「AI攻撃が誰の手にも渡る日は近い、ソフトバンクが実演した2時間で崩れる企業防衛の現実」東洋経済オンライン、2026年7月20日 記事を見る